フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)ある管理職が言う。「なぜ、部下は私の思った通りに動かないのか?」

またある男性が言う。「なぜ、妻は私の期待通りにしてくれないのか?」

さらにある親が言う。「なぜ子供は期待通りに勉強しないのか?」

そして、ある女性が言う。「なぜ、彼は結婚しようと言ってくれないのか?」

 

なぜ、周りの人はあなたの期待通りに動いてくれないのか?人生にとってひとつの重要なテーマであり、人を悩ませるテーマでもある。

そして、期待通りに動いてくれないとわかったとき、時に相手と衝突し、時に相手を攻撃する。

「わかってはいるけど、思った通りに相手が動いてくれないので、イライラする」という経験は、誰にでもあるものだ。

 

しかしそういったとき、相手を力ずくでねじ伏せようとしてもまずうまくいかない。相手が反発するのは容易に想像できる。事態を悪くするだけだ。

イライラするのも良くない、相手の気分を害するだけだ。

さらに「あいつは子供だ」「自分の思い通り行かないと、すぐにヒステリックになる」と陰口までついてくる。これでは全くうまくない。

 

では、このようなとき、どのような対処をするのが良いのだろうか。

不満に対処するためには、いくつかの知っておかなければならない原則がある。

 

 

1.不満の根源は、無くならない。

宇宙はカオスである。そして人間の幸福には無関心である。そしてまた、他人もそうである。他人は所詮他の宇宙であり、あなたが何を言おうと、基本的には僅かな変化しか起こらない。

そして、人が変わるには長い年月が必要であり、あなたがこの場で相手を変えようとするのは、全て無駄な試みである。人は変わるかもしれない。しかし、あなたが変えるわけではない。その人を変えられるのは、その人自身のみである。

 

2.あなたの不満は、相手を変えることの出来ない無力感から出ている

相手を変えたいのに変えられない。その無力感はあなたを怒らせ、悲しませる。したがって、それに対する対処は唯一、「自分を変えること」によってのみ得られる。

クレアモント大学の著名な心理学者、ミハイ・チクセントミハイ氏はこのように述べる。

「我々が自分自身を、また生活から得られる喜びをどのように感じるかは、究極的には心が日々の経験をどのように濾過し、解釈するかに直接左右される。

我々が幸福であるかどうかは、世界の大きな力に加える事のできる統制によるのではなく、内面の調和による。

しかし、外部環境を支配することは、すでに経験しているように、我々が個人としていかに喜びを感じるかに関してはそれほど役に立たない。カオスを減少させるためには、意識そのものを支配することを学ばねばならない」

 

3.一つが満たされると、満たされない不満がまた一つ出る。

我々は期待が達成されたとしても、更にまた新たな期待を持ち、それに対する不満を持つ。不満を解消しようとして努力する間は問題ないが、それに対する努力が無駄に終わると知ったとき、人はそこから幸福感を感じることができなくなってしまう。

つまりこれは終わりのない「ラットレース」である。

 

4.上の3つから得られる結論は、「幸福のカギは自己統制」である。

外部を変えることは出来ない。達成したとしても新しい不満が出る。終わりのない幸福ゲームから逃れるためには、「自分のコントロールできること」と、「コントロール出来ないこと」をきちんと区別し、「コントロールできること」をきちんと統制しているという、自己統制感が不可欠である。

  • 自分の欲望をコントロールしていると自ら知っている者
  • 自分のできることを知っている者
  • 自分のチャレンジが無駄になると分かったとしても、そこから楽しみを引き出せる者

のみが、幸福を手にする権利を得られる。

 

 

宗教も、哲学も、心理学も社会科学も、みな同じことを言っている。

 

部下は変わらない。部下を変えるのではなく、今あなたがやるべきことを変えれば良い。

妻は変わらない。妻の気持ちを変えるのではなく、今あなたの行動を変えればよい。

子供は勉強しない。子供の意欲を変えるのではなく、子供を信じよう。

彼は今のあなたとは結婚しない。結婚しなくても幸福になれると考えればいい。